被遗忘的事物|遺されたもの|Ghost of Memory
2013年4月27日-6月16日
市川陽子|国盛麻衣佳|高尾奈津子|鶴見幸代|西田知代|宮本華子
これは幻影なのか。私たちの目のまえに広がる景色や出来事に対してそんなふうに感じることがある。むしろ本来はそう思いながらどのように他者に確認してよいか分からず、あるいはその繰り返しで面倒になってしまい放り出している「私の目に映る世界」を平凡な日常の光景にしてしまうことの方が多いくらいかもしれない。
しかしこのある意味見捨てている日常は、あまりに普通の景色だからという理由からではなくて、表層を見て終わろうとする自己防衛的共存方法のようなものだ。つまり、差異の一己化、内面化によって幻影の火を鎮静化することで、私たちはなんとか共存しているのである。
ところがその火とその向こう側を奇妙な冷静さで眺める者がいる。発火エネルギーとなる粘着質な関係性の中にあって、冷静に双方を見る視点や感覚は、あえて象牙の塔のアーティストであることを恐れない異常さを孕んでいる。
今回紹介する若手作家6人がまさにそのようなアーティストだ。それぞれの作家は、制作のための取材を通して記憶と創造のあいだ(間)を往来し、一般社会や歴史に触れているにもかかわらず、どこか孤高なところに立っているような気がする。
今回の展示会場内であなたが気付くであろう急激に浸透し幻影を浮かび上がらせる作品。そしてそのメッセージを伝えようとする純粋で誠実である彼女たちの姿勢に接することになるだろう。
会場を去るとき、きっと以前より少しだけ「私の目に映る世界」を信じられるのではないだろうか。
女子美術大学 芸術学部 美術学科 洋画専攻 准教授 大森悟
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